霊柩(きゅう)運送業の開業方法
霊柩運送業とは、「貨物自動車運送事業法」に基づいて、一般貨物自動車運送事業として国土交通大臣から許可を受けた事業者だけが行うことができるライセンス事業です。
実は「人間」を乗せるということで、旅客自動車と思われがちですが、「人間」はその死を境に法律上「物」として解釈されます。
そのため、遺体を搬送する霊柩運送事業は、貨物自動車運送事業法の規制を受けます。
つまり、白ナンバーの自家用車での遺体搬送は、道路運送法に規定された営業類似行為の禁止に抵触し、違法行為となります。
霊柩運送業は、葬儀という仕事の中で無くてはならない事業です。
運送業許可の要件は5台以上の貨物車を準備しなければなりませんが、霊柩運送業は、個人・法人を問わず車両1台から申請することができます。
また登録車両が5台未満の場合は運行管理者及び整備管理者とも資格は必要ありません。
申請をしてから営業が開始出来るようになるまでには、3ヶ月~4ヶ月程かかりますので、その期間を見越して開業計画を立てる必要があります。
なお、霊柩運送業許可の要件は概ね①設備・車両、②人員、③資金の3つで構成されています。
霊柩(きゅう)運送事業に必要な要件
1.霊柩(きゅう)運送事業の設備要件
設備には、事務所・休憩仮眠室、車庫、車両の3つがあります。
事務所・休憩仮眠室について
都市計画法、農地法、建築基準法等の関係法令の遵守
特に都市計画法の規定に注意が必要です。以下の区域では運送業の営業所として使用できませんので契約前に十分に確認が必要です。
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※上記地域(市街化調整区域を除く)であっても、自宅住居と併設する場合は、認められるケースが多いです。
※第二種中高層住居専用地域では、床面積の制限はありますが、2階以下に設置する場合は、使用可能です。
営業所の使用権限があること
営業所の使用権限を証明しなければなりません。
※賃貸の場合は賃貸借契約書、申請者所有の場合は土地建物の不動産登記事項証明書で証明します。
適切な規模の事務所であること
事務所の広さについては、明確な数値での規定はありません。
従業員(運行管理者、ドライバー等の人員)が支障なく使用できるスペースを確保できれば、問題ありません。
ワンルームマンションの1部屋でも可能ですし、個人宅の1部屋でも可能です。
霊柩運送の場合は、葬儀社が運営するケースが多いので、その事務室を兼用することも可能です。
休憩・仮眠室の設置
乗務員に睡眠を与える必要がある場合には、少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さが必要です。
なお、原則として、休憩・仮眠室は営業所または車庫に併設する必要があります。
※運営上、睡眠が必要無いのであれば、ソファー、テーブル等設置して休憩室のみとすることも可能です。
車庫について
都市計画法、農地法、建築基準法等の関係法令の遵守
車庫については、営業所ほど規制は厳しくありませんが、土地の地目が「田」「畑」になっている場合は、使用できません。
不動産の取扱店へ確認するか、不動産の登記事項証明書を取寄せて確認して下さい。
車庫の前面道路幅の確認
車庫の前面道路(出入口が面している道路)の幅員については、「車両制限令」という法令に適合していることが要件となります。
まずは、車庫の出入口に面している公道について、幅員証明書を取寄せして下さい。
その際に、管轄の自治体へ使用予定の車両幅で、車両制限令に適合しているか確認して頂くと使用できる道路かどうか分かります。
幅員の目安としては、車両の幅の2倍の数値に50cmを足した値以上の幅員が必要になります。
車庫と営業所の距離の確認
原則として、車庫は営業所に併設ですが、営業所所在地から下表の距離以内に設置することでも問題ありません。
車庫と営業所の距離が10km以内の地域 | |
滋賀県 | 大津市、草津市 |
京都府 | 京都市、宇治市、城陽市、日向市、長岡京市、八幡市、 乙訓郡、久瀬郡、綴喜郡の田辺町 |
大阪府 | 5km以内地域を除く地域 |
兵庫県 | 神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、 加古川市、宝塚市、高砂市、川西市、加古郡 |
奈良県 | 奈良市、大和郡山市、天理市、橿原市、生駒市、 磯城郡の田原本町 |
和歌山県 | 和歌山市、海南市 |
車庫と営業所の距離が5km以内の地域 | |
滋賀県 | 上記の10km以内の地域以外 |
京都府 | 上記の10km以内の地域以外 |
大阪府 | 貝塚市、泉佐野市、泉南市、豊能郡、泉南郡、 南河内郡の太子町、河南町、千早赤阪村 |
兵庫県 | 上記の10km以内の地域以外 |
奈良県 | 上記の10km以内の地域以外 |
和歌山県 | 上記の10km以内の地域以外 |
車庫の面積の確認
車庫の面積は、実際に現地で寸法を計測し、平面図を作成します。
霊柩運送業の場合は、寝台車1台で運営というケースがほとんどだと思います。
そのため、月極車庫1台分または2台分を用意して申請することが可能です。
ただし、車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保される広さが必要です。
車両(寝台車、霊柩車)について
営業所毎に配置する事業用自動車の数は、1両以上あれば申請可能です。
車両は大きさ、構造が遺体を輸送するのに適切なものが必要です。
霊柩車両の種類は、宮型、洋型、バン型、バス型があります。軽自動車は別の事業となりますので、不可となります。
その他、使用する自動車の使用権限を証明しなければなりません。購入の場合は、譲渡証等|リースの場合は、契約書等|所有の場合は、車検証で証明します。
② 霊柩(きゅう)運送事業の人員要件
運行管理者の設置
常勤の運行管理者1名を確保しなければなりません。ドライバーと兼務することはできませんのでご注意下さい。
なお、車両4台までなら運行管理者の資格は必要ありません。
整備管理者の設置
常勤の整備管理者を確保しなければなりません。ドライバーとは兼務可能です。
車両4台までなら整備管理者の資格は必要ありません
運転者の配置
車両台数分の専属運転者を確保しなければなりません。短期雇用や日雇労働者等は員数に入りませんのでご注意ください。
社会保険の加入
法人の場合は、ドライバー、整備管理者、運行管理者の社会保険への加入が必要となります。
許可後に事業用ナンバーを取得する際に、加入証明を提出する必要があるので、その時までに加入しておきます。
※個人事業者で従業者が同居の親族の場合は、加入義務はありません。
③ 霊柩(きゅう)運送事業の資金要件
計画資金の全額を保有していること
霊柩(きゅう)運送事業許可を受けるためには計画資金の全額を保有していなければなりません。
資金計画は6か月分の人件費・燃料費・修繕費等、1年分の車両費、施設費等、1年分の保険料等の金額を合計して算出します。
例えば、法人で役員1名、ドライバー1名および運行管理者(役員と兼務)1名、車両1台で開業予定の場合、営業所、車庫の賃料と車両代を除いて、当事務所ではおよそ300万円でご提案いたします。
これに1年分の営業所・車庫賃料、車両代を足した金額が計画資金になります。
この合計した金額よりも自己資金(残高証明書)が上回っていなければなりません。
※申請日及び運輸局が決めた任意の日付けで残高証明書の提出を求められますので、途中で減額することのないように注意が必要です。
④ 霊柩(きゅう)運送事業のその他要件
〔法令遵守〕
申請者が貨物自動車運送事業法または道路運送法の違反により、申請日前3ヶ月間または申請日以降に、自動車その他の輪送施設の使用停止以上の処分または使用禁止の処分を受けた者ではないこと。
〔損害賠償能力〕
◆ 計画車両すべてについて自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済に加入する計画のほか、任意保険の締結等十分な損害賠償能力を有するものであること。
※任意保険加入の取扱いでは、以前は被害者1名につき5000万円以上の保障額が要件でしたが、現在の補償額は無制限となりました。